胃がんの治療と治療費
2016年、日本で一番罹患者数が多くなると予想されていたがんは、どこの部位のがんだと思います?第一位は大腸がんの147,200人、第二位は胃がんの133,900人です。(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター)胃がんはかつて、日本で最も罹患者数の多いがんでした。年齢調整罹患率と死亡率(*1)は年々減少してはいますが、2015年の胃がんによる予想死亡者数は49,400人となっており、部位別予想死亡者数では肺がん・大腸がんに次いで第三位となっています。
男女とも50代から罹患者数が急増し、年齢とともに罹患率も高くなっていきます。また男性の方が女性よりも罹患率が高いことも、胃がんの特徴です。
*1:年齢構成が異なる集団の間で罹患率(死亡率)を比較する場合や、同じ集団で罹患率(死亡率)の年次推移を確認する際に使用される、一定の調整を行ったデータのこと。日本では、昭和60年モデル人口が用いられています。
一般的に胃がんは大きくなるまでに時間がかかるため、定期的に検査を受けていれば早期の状態で胃がんを発見することもできます。また胃がんは早期の状態で発見された場合、約90%が根治出来ると言われています。
胃がんが疑われる場合、内視鏡検査・X線検査・超音波内視鏡検査・CT検査等が行われます。検査費用の目安は、以下の通りです。(10割負担の場合で、3割負担の場合、負担金額は下記金額の3割となります。)
内視鏡検査:12,000円/超音波内視鏡検査:16,000円/X線検査(二重造影法):10,000円/CT検査(単純CT):18,000円/CT検査(造影CT):28,000円
胃がんの治療法は「病期(ステージ)」により異なります。一般的には遠隔転移がある場合(Ⅳ期)を除くと、胃がんの標準的な治療は手術になります。
がんが粘膜層内にとどまっていてリンパ節への転移がない場合には内視鏡手術を選択することも出来ます。内視鏡手術の場合、開腹手術に比べからだへの負担が少なく、また術後の食生活への影響が少ないというメリットもあります。
一方リンパ節に転移がある場合には、リンパ節郭清により、胃とともにがんが転移したリンパ節を取り除きます。以前は早期の状態であっても定型手術(リンパ節転移の可能性がある場合に行う手術で、胃の2/3から4/5程度を切り取る部分切除術や胃の全摘手術、さらにリンパ節や周囲の脂肪組織を切除する手術)が行われていましたが、現在は内視鏡手術適用外の早期がんでは、胃やリンパ節を出来るだけ残す縮小手術が行われるようになってきています。
またまだ研究的治療とされていますが、早期の胃がんに対しては、おなかに数個の小さな穴(5-10ミリ程度)をあけ、そこから手術に使用する器具を挿入し、専用の高性能カメラの拡大画像を見ながら手術を行う腹腔鏡手術も行われています。
手術が出来ない進行がんや、手術で取りきることが出来なかった再発がんや転移がんに対しては、化学療法(抗がん剤治療)が行われます。
胃がんの化学療法を行う際には、がん細胞の増殖にかかわるHER2というたんぱく質の受容体が陽性かどうかを調べ、使用する抗がん剤や分子標的薬(*2)を決定します。
*2:分子標的薬とは、がんの増殖にかかわる特定の分子だけを特異的に攻撃する薬のことです。
治療方法と治療費の目安(10割負担の場合)は、以下の通りです。(3割負担の場合、負担金額は下記金額の3割となります。)
【内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)】
治療費195,000円/入院費(7日間)460,000円:合計655,000円
【内視鏡的粘膜切除術】
治療費65,000円/入院費(6日間)300,000円:合計365,000円
【定型手術(幽門側胃切除術)】
治療費750,000円/入院費(15日間)1,450,000円:合計2,200,000円
【縮小手術(幽門保存胃切除術)】
治療費750,000円/入院費(13日間))1,370,000円:合計2,120,000円
【腹腔鏡手術】
治療費990,000円/入院費(14日間))1,520,000円:合計2,510,000円
【化学療法】
身長158cm、体重45kg、切除不能、HER2陰性、大動脈周囲リンパ節転移の場合
治療内容:一次化学療法として、テガフール・ギメラシル・TS-1・シスプラチン併用療法を6ヶ月(5週間ごとに5サイクル)
治療費:460,000円
参考:国立がん研究センターのがんとお金の本